コラム

「ナチュラル」と「ケミカル」、どちらがお好きですか?

「こういうナチュラルコスメに替えていこうと思って、皮膚科医がつくったというのを買ったばかり。こういうふうに、成分がシンプルなのがいいのよね」とお店でお客様に同意を求められることが、よくあります。『しょうが百花』は「ナチュラル」では皮膚科医とは異なり、「シンプル」では同じです。

ナチュラルコスメが特にカテゴリー分けされているのは、それは一般的なコスメがケミカルコスメだからです。ケミカルコスメは、ドラッグストアやバラエティショップ、百貨店で便利にどこでも購入できます。ナチュラルコスメは、健康食品専門店から広まり、百貨店の専門コーナーやセレクトショップなどでの取り扱いがほとんどで、皆さんが特に意識をしなければ、残念ながらナチュラルコスメと出会うことはありません。おそらく冒頭のお客様は、初めて見るブランド、成分がシンプル=肌に優しいといったことから、皮膚科医がつくったというコスメを『しょうが百花』と同様の「ナチュラルコスメ」と認識されたのだと思います。

ナチュラルコスメは、主な原料が天然由来、石油由来成分は排除。

ナチュラルコスメとは、どのようなものでしょうか?ナチュラルコスメとケミカルコスメの特徴を表にしました。

ナチュラルコスメケミカルコスメ
原料植物や動物など天然由来の原料(植物油脂、動物油脂、精油、植物エキスや芳香蒸留水、鉱物)を使い、石油由来成分は排除・化学的に合成された原料、石油由来の原料を多く使う
・天然由来成分の配合はごく少量
・均一性、安定性を重視
・「ナノ、誘導体、細胞」
肌へのアプローチ・天然ポリマー(ヒアルロン酸、コラーゲン、海藻由来成分など)で肌をマスキング
・天然由来成分の薬理作用
『しょうが百花』の場合
肌をマスキングする原料は排除し、自立した肌をつくるケア

・合成ポリマーで肌をマスキング、見た目や使用感を重視
・医薬部外品の場合には、有効成分の薬理作用
価格天然由来の原料は価格が高いため、ドラッグストアやバラエティショップにあるケミカルコスメよりも高い傾向100円から数万円と幅広い

ナチュラルコスメとケミカルコスメは、主な原料が天然由来かどうか、石油由来成分を含むかどうかで概ね区別できます。どんな成分なのかは、商品パッケージの全成分表示の成分名をネット検索すれば知ることができます。その皮膚科医がつくったというコスメの原料はと成分表示を見ると、保湿成分は水とシリコーン油(合成ポリマー)です。合成ポリマーは、肌をビニールのような膜で覆い、肌の水分の蒸発を防ぎ、ハリのある滑らかな肌に見せてくれます。これはケミカルコスメですね。そもそも医師は、化学的に合成された薬を用いて治療をします。

そして、皮膚科医がつくったコスメは、接触性皮膚炎などスキンケアによる肌へのリスクを排除する観点から、使用成分がシンプルです。『しょうが百花』も植物などの天然原料にアレルギー反応を起こす人もいますので、できるだけシンプルにという方針で商品を開発しています。また、天然由来であっても肌を覆うポリマー(高分子化合物)は肌の自立を妨げると考えるので排除しています。成分としては、ヒアルロン酸、コラーゲン、プロテオグリカン、増粘剤としてよく利用されるキサンタンガム、カラギーナン(紅藻由来)などがあります。

根柢の思想が異なります、しっくりするのはどちらですか?

ナチュラルコスメとケミカルコスメを掘り下げたキーワードです。

ナチュラルコスメケミカルコスメ
・健康志向、着け心地、内向き
・東洋医学的(全体システム主義)
・生合成
・生物学、生化学
・ローズ
・ファッション志向、見映え、外向き
・西洋医学的(要素還元主義)
・化学合成
・薬学、化学
・ゲラニオール(ローズの香りの主成分)

例えば、シミ対策へのアプローチを比べてみましょう。化粧品では、予防のケアになります。ケミカルコスメは、ビタミンC、アルブチン、コウジ酸、トラネキサム酸、エラグ酸など医薬部外品の有効成分で、シミ予防を目指します。有効成分を配合することで、「メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ」又は「日やけによるしみ・そばかすを防ぐ」という医薬部外品の表示ができます。単一の有効成分によるアプローチは、病気の原因である臓器や細胞の不具合を薬(単一成分)で正常化する西洋医学的です。一方、ナチュラルコスメ『しょうが百花』は、植物油脂と植物成分を含む基材(石けん成分などベースとなる成分)が皮脂膜を整え、肌に水分を保つことで「肌のサイクルによりシミを薄くする」、「肌全体のトーンアップ」を目指します。人の全体システムを重視し、多くの成分を含む生薬で治療する東洋医学的です。他のナチュラルコスメの理解が浅いので、『しょうが百花』で比べました。

「合成」というと、化学の力で人工的に物質を作る化学合成を指すことが一般的ですが、私たち人間も植物も生合成しています。人間などの動物は、摂取した食物を代謝して単純な化合物に消化、変換、分解し、この過程でエネルギーを取り出しており、この代謝を生合成といいます。植物は食物を摂取する代わりに、空気中の二酸化炭素と根から吸収するミネラルを原料に、太陽エネルギーを使って様々な有機化合物を合成、すなわち光合成をしています。光合成で作り出した糖質、脂質、核酸、アミノ酸、タンパク質をより単純な化合物に代謝し、その過程でエネルギーを得ています。

動かない植物は、外敵からの防御や繁殖に必要な成分を生合成するように進化してきました。それらは渋味、辛味、色素や香りといった成分で、抗酸化作用を持つものが多く、カテキン、アントシアニン、イソフラボン、リコピンなどがよく知られています。ナチュラルコスメには、このような生合成された「フィトケミカル」を多く含む全草(例えばカテキンを多く含む緑茶葉)を原料として使用します。

ナチュラルコスメによく利用されるローズも、渋味成分ポリフェノールを多く含み、香りの主成分ゲラニオールには防虫効果があります。いずれもローズが生き残るために獲得した生合成経路でつくりだします。花を水蒸気蒸留して抽出するローズ精油には、ゲラニオール以外の香り成分も含まれています。一方で、単一成分ゲラニオールは化学合成できます。化学合成は、生物の生合成の経路にヒントを得るものや、目的物に似た化学結合を持つ化合物を原料に、高温、高圧、酸化、還元、硫化など薬品を使って、元素の手を結合切断して分子を合成します。ゲラニオールの出発原料は、アセトンとアセチレンだったり、石油だったり、ローズとは非なるものです。

そして、全てを化学合成する場合を全合成といい、一方で、植物や動物、菌類等から抽出された天然物を原料とした場合には半合成といいます。出発原料ヤシ油で合成した界面活性剤や、従来は出発原料が石油だったものを植物に替えて合成した成分は、ナチュラルコスメでも使われています。『よもぎと檸檬マートルのハーブ水』に配合しているBG(ブチレングリコール)は、保湿・抗菌成分として化粧品での使用経験が長く、従来は出発原料が石油のものが一般的でしたが、サトウキビ由来のエタノール(バイオエタノール)を出発原料としたBGを使用しています。

STOP地球温暖化!新しいナチュラルコスメの時代へ。

20世紀前半に石油が新たなエネルギー資源として開発され、石油化学が今の暮らしを支えています。人類史で初めてのケミカルコスメの時代です。石油は、地球が温暖で二酸化炭素濃度が高かった太古の昔に、植物や微生物が繁殖し、盛んに光合成した大量の遺骸が蓄積したものが高温、高圧で液体化したと言われています。光合成物質である石油を消費すると二酸化炭素が排出されます。石油を消費する私たちの活動によって排出された二酸化炭素を、再び光合成で有用な化合物にして無毒化するのを今の植物が担っているのです。

私たちは植物に支えられて存在しています。地球温暖化が深刻な今、身近な暮らしの中で、石油を減らして植物を増やしていくことがとても大切です。ナチュラルコスメを使う人が増えると、地球に植物が増えます。今までの温暖化を引き起こした消費を当たり前にせず、毎日身近に使うコスメをナチュラルコスメに替えませんか?二酸化炭素を吸収し光合成で天然の恵みをつくる植物を、日用品に取り入れ、地球に植物が増える新しい時代。ケミカルコスメの時代から、新しいナチュラルコスメの時代を一緒につくりましょう。

  • 参考文献
  • 「決定版!ナチュラルコスメ・バイブル」小松和子(宝島社)
  • 「植物はなぜ薬を作るのか」斉藤和孝(文春新書)

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